2月23日に開催された日本多読学会の「関西多読指導新人セミナー」の覚え書きその3です。
- 「長文読解と多読」安福勝人(武庫川女子大学附属中学校高等学校)
安福先生が附属中学で行われている非訳読授業の概要と多読の意義についての発表。
先生の授業では、教員またはCDによるテキスト本文のリスニング→コーラスリーディング→文法解説と訳読(和訳)という従来型の授業ではなく、「ALTによるリスニング→シャドーイング(はじめはテキストを見てもよい)→訳読なしのセルフリーディング」というかたちで、ALTとの「漫才」と「授業マップ」で本文の内容理解をすすめていくとのこと(文法については日本語の説明あり)。「セルフリーディング」では「バズリーディング」として音声を出す読みを自分のペースでやらせ、読むものは教科書には書かれていない各場面の「あいだ」や背景を埋めた「書き換え教材」(教科書の3倍ほどの長さになっているもの)。詳しく言及されてはいませんでしたが、「書き換え教材」意外にもGRのような図書も取りいれて多読をしていると思います。
そして、多読の意義として
・自然な語順を習得する
・英文を意味単位で捉える
・読書を通して文法体系を習得する
・英語文化を体験する
・英語特有の表現を経験する
・物語全体を英語で表現する
・言語活動の4スキルを円滑にする
ということを挙げておられました。
それから、印象に残った発言は「読解力向上のための要素」についてで、それは「ほめること」、「宿題を出すこと」、「動機付けすること」の3つ。「ほめる」というのは、学年の上の学生ほど忘れがちだったけれども大切だよなぁ…と思いました。*1
- 「幼稚園児から大学生までのERクラス」宮下いづみ(Eunice English Tutorial)
自身の教室では幼稚園児から高校生、予備校では高校生、そして大学生と様々な場所で様々な年齢層の生徒・学生を教えている宮下先生は、小学生以下の生徒さんへの授業を実際に見せてもらったような内容でした。大学入試の和訳の添削以外は英語で行うという先生の公開授業は、英語。行事の紹介(今回はSaint Patrick’s Dayについて)、歌、シリーズ物のキャラクターを覚えてもらうためのゲームなど、多読への導入部分を見せてくださいました。(中学生以上に対する導入としては、多読の効果を丁寧に解説するそうです。)
ハロウィーンのように馴染みがでてきた行事でもどのような趣旨のものなのか実はよく分からないというものもあるし、イースターや感謝祭のようにちょこちょこ出くわすものの何のことやらわけがわからぬものもあるわけで、節目節目の行事についてのイントロダクションは小学生以上の学習者にも有益だと思います。また、多読の入門では鉄板とされるORT(Oxford Reading Tree)やFRL(Foundations Reading Library)のようなシリーズ物も、それぞれのキャラクターの名前と顔を一致してからはじめた方が理解も早いわけですから、授業で鉄板と位置づける以上は年齢が上の学生に対しても主要キャラクターの紹介をオリエンテーションでしておくべきかな…とも思いました。
読書記録は幼稚園児でもつけることにしている(!)とのことです。ただし、幼稚園児だとまだ文字を覚えていないこともあり、間違いなどは気にしないそう。
読書時間についても言及されていて、「学校」でやると決めたら授業内で30〜90分やるとのことでした。小学生以下が対象の教室では固定の読書時間は設定していないようです。
*1:大の大人の自分だって「“叩かれて伸びる子”って思われてるふしがあるけど、私だって実は”ほめて伸びる子”なの!」と言っていた(る)くらいだもの、学生さんだってほめられたほうが頑張れるよねぇ…。
コメント