2月21日(土)に日本多読学会の関西多読新人セミナー(@摂南大学)に参加してきました。まずは前半の記録(感想含む)。
●「小学生・中学生向け 多読始動の基本のキ」(樫本洋子先生)
2003年から200冊ほどの蔵書*1からスタートしたという、児童英語教室での多読始動についての発表。
自分で読むことができない低学年はアルファベットや音素の指導に徹しつつ、読み聞かせのような形でリーディングを導入。中学年でもフォニックスのような音声指導を徹底しつつ、レッスン内でリーディング・タイムをもうけて多読(音読:各自で選んだ本を一斉に音読するというスタイル)。また、5分ほどブックトーク(日本語で、本の内容や面白かった点について話すというもの)も行うとのこと。高学年では多聴多読。
自動機の多読指導で大切にしたいこととして樫本先生がおっしゃっていたのは、
・音声を大切にしながら(=音声とセットにして)行う
・多読に適した図書に関する幅広い蔵書と(指導者自身の多読経験に基づく)知識
・繰り返し根気よく行い、読書の楽しさを体験させる
ということ。特に2点目は、自分自身の、また、勤務校での経験から身をもって感じていることであるので、多読に興味がある方は方法論をかじるよりも、学生たちが喜んで読む図書を実際に読んでみることをまずは試してみてもらいたいものです。それから、「多読は究極の個別指導」という発言にもおおいに共感しました。
●多読模擬授業(高瀬敦子先生)
予定変更で、『英語多読・多聴指導マニュアル』(大修館)の著者である高瀬先生が、解説をまじえつつ、導入時にあたる授業を行ってくださいました。セミナーなどでの熱意あふれる語りを聞くたびに先生の授業を見たいなぁ…と思っていたわけですが、はからずも生徒として授業の一端を体験することができてラッキーでした。採点の大祭典を終えてヘロヘロな状態ながら、大阪まで出かけていってよかった!
模擬授業の中では、5分間で図書(YL1未満のもの)を読み、読んだ本の中で出てきた単語として覚えているものを2〜3分(←時間はうろ覚え)で書き出すという活動を行いました。この活動はすべり読み防止になるとのことでしたが、昼食後や体育後などだれ気味の時に入れたりすれば授業の活性化にも役立ちそうです。うちの学生は手を動かすことを好む傾向があるので、この活動は4月から取り入れようと思います。
多読授業の詳細は、こちらで。
●多読授業:楽しい読書体験を!(黛順子先生)
学会でも図書紹介をしてくださることの多い黛先生は、多読ライブラリの組み立て方についてご発表。
基本的な組み立ては、Oxford Reading Treeなどの子ども向けの易しいReaders (Leveled Readers) +Foundations Reading Library, Penguin Readers, Macmillan Readers, Penguin Readers, Oxford BookwormsのようなGraded Readers+UsborneのシリーズやJY Booksなど音も楽しめる絵本シリーズ。中心になるReadersは複数用意すると初期の読書が効率よく進んでいくとのこと(私のところではORTやFRLがここ;授業を始めてみて、基幹となるシリーズを複数そろえる必要性を感じて増やした)。
多読授業を行う上で重要なこととして、蔵書が少ない時の大人数での多読は破綻の原因になると指摘されていました。時間をかけて蔵書を増やしつつ、人数も増やしていくべきとのこと。「小さく始めるべし」というのは、豊田高専の西澤一先生もよくおっしゃっるアドバイス。私自身も西澤先生のアドバイスに従って公開講座で小さくはじめたのですが、そのおかげで授業でもスムーズに導入できたし、蔵書を増やすためのきっかけにもなりました。軌道に乗るまでは自前の本もかなり投入しないといけないことが多いと思われるので、懐に対する打撃という点でも小さく始めることは重要です。
全部分からないと分からない(→分からないところを飛ばしたら、全部飛ばすことになる)ことになるため、ノンフィクションは学生にとってハードルが高いという発言もありました。言われてみれば確かにそうなのだけれど、言われてみてはじめて、ノンフィクションが不人気となる理由が分かりました。
名前が挙がったうち、未読につき興味をもったのは…
Tadpolesは絵がきれいで読みやすいシリーズ、Welcome Booksは短くて読みやすいノンフィクションのシリーズ。Bananasは有名作家も書いているシリーズで、Green、Blue、Red、Yellowという順にレベルが上がっていくそうです。
*1:現在は3〜4000冊ほどとのこと。4000冊といったら、私の勤務校の蔵書数と同じくらいなのです!
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