先日の遠征ではお腹をパンパンにしながら、英語教育に関することももっと勉強しないといかんなぁ・・・などとしみじみと思っておりました。世代・地域・専攻のどれも異なる学生が相手なだけに授業の工夫が必要だと日々感じているし、職場では”英語の先生”としての成果を何よりも求められているのだし、教育系のことで発表や報告をする機会がまだまだありそうだし・・・というわけで、この方面についても見聞を広めなければ・・・と思う今日この頃であります。
今週末からの出張ロード第1弾で講演を聞くことになっているということもあり、まずはこちらを。
白井恭弘『外国語学習の科学』
自分自身が苦労しているということもあり、「動機づけ」に関して述べてある第3章をとくに興味深く読みました。
ちなみに、動機づけには「統合的動機づけ」(=学習対象言語・話者・文化に対する好意的な関心)と「道具的動機づけ」(=その言語ができるかできないかで受験や就職が左右されるといった事情)に二分されます。動機づけ研究の中心となったロバート・ガードナーという人は、長期的な学習の成功と結びつくといったことなどから「統合的な動機づけ」のほうが重要だと考えているそう。だからといって「道具的動機づけ」では効果が出ないというわけではないので、学習が継続されるように道具的動機が維持される状況を生み出せればよさそうです。
[勤務校では「統合的動機」がある学生はごくごく少数で、この手の動機を全体に持たせようとするのは至難の業と思われます(なにせ「夜露死苦」的などす黒い空気がうずまくので)。年長組の状況を踏まえてみると、「道具的動機」によって英語学習が自然となされるようになっているわけで、*1こちらを刺激する方策を打ち出すことがうちでは効果的だろうな・・・と思ったのであります。]
それからこの本では、言語習得*2の最低条件として”「インプット」+「アウトプットの必要性」”ということがあげてあります。「アウトプット」ではなく「アウトプットの必要性」となっているのは、必要性があれば頭の中でリハーサルをするなどして発話能力が鍛えられているからということのようです。
[アウトプットの場はボスが築いてくれていたので、インプットを効果的におこなっていくのが今後の課題。英語多読をうまく導入していきたいところ。]
また最後には、「三ヶ月*3で一五分間会話ができるようになる学習法」(インプット=インターアクションモデル)なるものが紹介されています。ここはちょっと引用。
授業の中心となる活動は、その日に導入された文法項目を使った学生どうしのインタビューです。会話内容は、自分のことや、クラスメートのことで、友人、出身、趣味、家族、授業、先生、自分のアパート、冬休みの予定、などについて、お互いにインタビューし、インタビューで得た情報をノートにメモしておいて、宿題でクラスメートや自分のことについて書く、というものです。
各課ごとに、よく使われる構文・表現が多数はいったダイアローグがあり、それを暗記して、言語のデータベースを増やします。評価も重要なポイントで、学期末試験の一部として実際に一五分の会話をさせ、それが成績の一〇パーセントを占めています。学習者は学期末には一五分話せないといけないことがわかっているので、リハーサルをするようになるでしょう。(181)
英語教育を「実践」してきたものの「専攻」していたのではない私のような者にとっては、経験を通してぼんやりと感じていたことがどう検証・理論化されているのかを知るのにはよいものでした。
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